燕雀の夢:天野純希
総合:★★★(太閤殿下の魅力度:★ 話の面白さ:★★★)
6話の短編構成で、タイトルは6話目です。「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」という故事から来ているタイトルで小説の内容と相まって洒落ていると思いました。
歴史において偉大な息子の陰に隠れてしまった父親達の話です。もちろん、その父親達も決して非凡ではなかったのだろうが、息子たちがあまりにも偉大過ぎた。。どの話も「父である前に侍であった」という点を体現していました。
只、長尾為景や伊達輝宗、松平広忠は人生において成功よりも挫折や苦境のほうが多かった故に息子へは純粋な期待があった一方で、武田信虎や織田信秀は自身に自信があった故に息子に対しては嫉妬・恐怖を抱いていた部分もあって、父よりも侍として散っていったような気がしました。信秀が死ぬシーンは泣きましたし、信虎の引き際もカッコよかった。
そしてそして、6話目。弥右衛門は境遇としては恵まれていないので、本来は息子に純粋な期待を抱いてもおかしくないのだが、前の話の5人とは違って身分の低い侍もどきだった故に侍として成功したいという思いがとても強く、それゆえに息子に対する嫉妬というのは強かったように描かれています。(そこには別の理由も絡んでいると思うのですが、それはせひ小説を読んでください)そんな彼が出世していく秀吉に対して発したセリフが「己の素性でさえ偽りで塗り固めたお前がどこまで羽ばたけるのか、この目で見届けてやる」であって、私はそこに憎しみと共に愛も感じました。まぁ、秀吉の父親って素性がいまだに謎なので想像を膨らませやすいですよね。。
総合点は★3にしておりますが、話が面白い小説なのでぜひせひ読んでほしいです。読んだ後、切ないような温かいような気持ちになりました。
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