天地雷動：伊東潤
総合：★★★★（太閤殿下の魅力度：★★★ 話の面白さ：★★）
長篠の戦をテーマとして小説です。信玄の死から長篠の戦を経て武田氏が滅んでいく様を描いています。
面白かったです。特に、クライマックスの戦のシーン。無謀だと知りながらも勝頼を逃がすために散っていった重臣たちの武士としての誇りと心の底にある武田氏への忠義心はあっぱれでした。「負けると分かっていても漢には引けないときがある」を体現したシーンには泣けました。
この戦に至るまでの勝頼と重臣たちの軋轢、勝頼自身の葛藤があるだけに余計にクライマックスが盛り上がりました。個人的には、武田氏の滅亡の原因は信玄だったんではないかと。彼の遺言や日頃の態度が、勝頼の枷になってしまったゆえに、勝頼も意地になってしまって冷静に判断ができなかったのではないか。もし、信玄がもっと勝頼に自由を与えていたら結果は違うのかもとも思ったりしました。
偉大な人の後継者って苦労しますよね。周りは絶対に比べるし、自分も劣等感を感じるし、がんばっても同じような偉業成し遂げられるかと言われれば無理だし。そういう意味では天才の後継者って育たないと思うんですよね。ハードモードすぎて。これは持論なのですが、私の中では信長と秀吉は天才、家康は秀才なんです。天才の真似はできないけど、秀才の真似はできるじゃないですか。だから、家康は後継者が育って長期政権を確立できたのではないかと。（あくまでも信長・秀吉好きな私の持論です）
さて、肝心の秀吉様ですが、最高に有能でかっこよかったです！銃の調達から銃の三段撃ちまで全て秀吉が手配しています。いやぁ、有能。
信長に質のよい銃を三千丁調達しろ（←質の良いという点がかなりの無茶ぶり）、銃の撃ち方を考えるのもそちの仕事（←銃三千丁は信長のアイディアなのに、その使い方は秀吉に丸投げという荒業）と言われて、さらには「別に無理にやれとは言っていないけどねー。やれないならいいよ」と言われるという。。。その中でも奮闘する秀吉が可哀そうで可愛いです。（こんなのが上司だったら私は殺意を覚えるレベル（笑）だから、本能寺で明智に、おっとこれタブー（笑））
でも、信長と秀吉間の信頼関係とかわちゃわちゃした主従のやりとりが微笑ましくて読んでいてニヤニヤがとまりません。
あと、地味この話の中で、秀吉をべた褒めする家康がいるんですよ。しかも心の中で。推しを宿敵に褒められるってなんか嬉しい。すごい好きなシーンです。（伊東先生、私の心にぶっ刺さりました！）
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